外国にルーツを持つ子どもが抱える問題

グローバル化が進み、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が国境を越えて行きかう時代となって久しい今日、2008年末現在の日本における外国人登録者数は約221万人に達し、日本の総人口の約1.7%を占めるようになりました。

日本で暮らす外国人の多くは出稼ぎ目的で来日した人たちであり、そうした親に伴って来日する子どもや呼び寄せられる子どもも増加しており、2009年末現在、8万人を超える外国籍児童・生徒が日本の小学校、中学校、高校に通っています。

また国際結婚間の日本国籍を有する子どもを含めると、外国にルーツをもつ子どもは8万人を大きく上回ります。

日本の学校で学ぶ外国籍児童・生徒は増加しているものの、日本の学校教育は日本「国民」の育成を目的としているため、外国人が学ぶことを前提としておらず、彼らは言語や学習、学校文化への適応等、さまざまな面で困難に直面しています。

1. 日本語習得の困難さ


日本語はひらがな、かたかな、漢字と覚えるべき文字が多い上、語彙数も多く、話し言葉と書き言葉の違いが大きい言語であるため、第二言語として習得することが大変難しい言語です。

また親の出稼ぎや再婚に伴い来日する子どもたちは、ある日突然日本に連れてこられるケースが大半であり、来日前にあらかじめ日本語を学習することはまずありません。つまり全く日本語に触れたことの無い子どもたちが、日本の小学校や中学校に編入することになります。

各自治体ではこのような子どもたちに対し日本語の初期指導を行っていますが、指導時間数が少ない上、指導者も日本語教師資格を保有していない一般の学校教員が対応することが大半である等、その内容は量・質ともに十分ではありません。そのため多くの外国にルーツをもつ子どもは日本語の習得に大変苦労しています。

2. 教科学習習得の困難さ


言語学者Jim Cumminsによると、言語能力には日常生活で必要となる生活言語と認知・学習活動で必要となる学習言語の2つの種類があると言われています。アメリカにおける移民の子どもの言語習得においては、生活言語は他者との交流や遊び、テレビなどを通して身につくものであり、1~2年で習得されるものである一方、学習言語は習得に5~7年かかると言われています。これらを踏まえると、現在実施されている100時間程度の日本語初期指導は学習言語を習得する上で十分ではないことが分かります。生活言語を身につけていたとしても、学習言語を身につけるまでには至っておらず、教科学習の習得に支障をきたしている子どもは少なくありません。

また教科学習習得については、出身国の学習内容も重要な要素となります。出身国と日本とでは学習内容が異なることが少なくありません。たとえばフィリピンの場合、掛け算は指を使って計算する子どもが多く、九九を暗記している子どもの方がむしろ少ないのです。また教員や教室の不足によりカリキュラム通りに学習が進まないケースが多いため、未習部分が多く、分数や少数の理解度が低いというケースも多いのです。このような子どもたちが日本において教科学習を習得することは極めて困難であることは想像に難くないでしょう。

3. 高校進学の壁


首都圏においては近年、小学校高学年以上、とりわけ中学校以上で来日するケースが増加しており、そうした子どもは来日後1~2年程度で高校入試を迎えることになります。1~2年間で日本語を習得し、教科学習も習得し、日本語による入試問題を解くための勉強もしなければなりません。とりわけ非漢字圏の国からやってきた子どもについては日本の小学校で習う1006字の漢字が未習な状態からのスタートとなり、漢字だらけの入試問題を解く必要がある高校入試は非常に高いハードルとなっています。

また高校は教科学習の内容も専門化・高度化するため、授業についていけなくなり、ドロップアウトする子どもも少なくありません。希望の進路に進むという意味で、高校に進学することは重要ですが、同時に入れっぱなしではなく、高校入学後も勉強を続けられる環境づくりとサポート体制を維持していく必要があります。

4. 日本の学校文化への適応の困難さとアイデンティティクライシス


出身国と日本では価値観や宗教観、学校文化が異なるため、日本社会や日本の学校に馴染むことができないという子どもも少なくありません。出身国では当たり前であった習慣が、日本の学校では禁止されていることや、日本人からは奇異の目で見られるということもしばしば起こります。

また集団行動や同質性を重んじる日本の学校において、外国にルーツをもつ子どもは文化や習慣、外見の違い等により、時としてクラスメートにからかわれること、いじめられることもあり、彼らは複雑な思いを抱えて日々を過ごしています。中には自信を喪失し、自身のバックグラウンドを否定してしまい、日本に同化してしまう子どもや、ジレンマや怒りの矛先を親に向けてしまう子どももいます。

5. 情報不足と情報伝達ツールの未整備


子どもの保護者も日本における子どもの教育に大変苦労をしています。出稼ぎ目的で来日する外国人の多くは滞日年数が長くとも、日本語によるコミュニケーション、とりわけ読み書きが苦手である場合が多いのです。そのため学校からのお知らせの内容を理解できないことや、学校の先生と意思疎通を図ることができないということも少なくありません。

また出身国とは異なる日本の教育制度、とりわけ受験の仕組みを理解することが困難であり、子どもの進路について適切な選択や判断ができない場合もあります。